ALSの方の訪問に入る前に読む講座

区分4 もしもの時★★★

No.07 アラーム・急変・停電の時の動き

この講座で一番大事な単元です。アラームが鳴った時、様子がおかしい時、停電の時に、最初の1分で何を見るか。ここだけは、読んで終わりにせず、訪問前に家ごとの決まりを確かめてください。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 アラームが鳴ったら最初の1分
  3. 第2章 落ち着いてから原因を見る
  4. 第3章 停電・災害に備える
  5. 卒業課題:訪問前チェック10項目
  6. 確認問題

第0章 前提知識

① アラーム :呼吸器が、普段と違う状態を知らせる音と表示

回路が外れた、空気の通り道が塞がった、電源に問題がある、といった時に鳴ります。 音が鳴った=即危険というわけではありませんが、必ず確かめる必要があります。

② パルスオキシメーター :指などに挟んで、血の中の酸素の量を測る機械

数字が普段より低い時は、呼吸がうまくいっていないサインです。

③ カニューレ :気管切開の方の、のどの穴に入っている管

体位変換や着替えの時に抜けたり、痰で詰まったりすることがあります。

第1章 アラームが鳴ったら最初の1分

内容は大きく3つです。

① 最初に見るのは機械ではなく本人 必ず覚える

アラームが鳴ると、つい機械の表示を見てしまいますが、最初に見るのはご本人の顔色と胸の動きです。 顔色が悪い、胸が動いていない、いつもと息の様子が違う。 ここをまず確かめてください。

② パルスオキシメーターを見る 必ず覚える

顔色・胸の動きを見たら、パルスオキシメーターの数字を確かめます。 普段の数字を知っておくと、下がっているかどうかがすぐ分かります。

③ 家ごとの決まりに沿って、蘇生バッグ・連絡 必ず覚える

ここからは、家ごとに決めてある緊急時の手順に沿って動きます。 蘇生バッグ(アンビューバッグ)を使うかどうか、誰が使うか、連絡を誰にどの順番で入れるか。

これらは119と看護師のどちらを先に連絡するかも含めて、公的に決まった順番があるわけではありません。 訪問前に、その家の決まりを必ず確かめておく必要があります。 決まりを確かめていない家で、その場の判断だけで動くのは危険です。

だから、決まりを確かめる前に一人で訪問に入らないことが一番の備えです。初回は看護師かご家族、管理者と一緒に入ります。それでも命が危ないと感じたら、119番は誰がかけてもかまいません。

○ 深追いしない:蘇生バッグの押し方そのものの手順は、この講座では扱いません。使い方はご家族・看護師から教わってください 深追いしない ○ よくある勘違い:研修を受けていないヘルパーが蘇生バッグを使ってよいかは、どの通知にも書かれていません。「分からないから使わない」ではなく、訪問前に家の決まりとして確かめておきます

アラームが鳴ったら、まず本人の顔色と胸の動き→パルスオキシメーター→家の決まりに沿って蘇生バッグ・連絡。

第2章 落ち着いてから原因を見る

内容は大きく3つです。

呼吸が落ち着いて、ご本人の様子が安定してから、何が原因だったかを確かめます。 慌てている時に原因探しを先にすると、本人を見る時間が削られてしまいます。 介助の後の確かめ(No.04)と同じ順番です。

① カニューレ(またはマスク) さらっと

気管切開の方は、カニューレが抜けていないか、痰で詰まっていないかも見ます。マスクの方は、マスクのズレや隙間を見ます。 体位変換や着替えの直後は、特に位置が動きやすいタイミングです(No.04で説明した「介助の後の確かめ」にもつながります)。

② 回路 必ず覚える

呼吸器から本人をつなぐチューブ(回路)が外れていないか、どこかに隙間ができていないかを見ます。 回路が外れても、先が布団などで塞がれているとアラームが鳴らないことがあるので、見た目だけで判断せず、本人の様子と合わせて確かめます。

③ 電源(呼吸器が動いているか) 必ず覚える

コンセントがしっかり挿さっているか、バッテリーの残りが十分かを確かめます。 複数の人が介助に入っていると「誰かが挿しただろう」と思い込んで、実は挿さっていなかった、ということも起こります。

原因を見るのは本人が落ち着いた後。カニューレ(またはマスク)→回路→電源(呼吸器が動いているか)の順で確かめる。介助の後の確かめ(No.04)と同じ順番です。

第3章 停電・災害に備える

内容は大きく3つです。

① バッテリーを確かめる 必ず覚える

内部バッテリー・外部バッテリーがどれくらいの時間使えるか、充電にどれくらいかかるかを、訪問前に確かめておきます。 取り外しできるバッテリーは複数用意されていることが多いので、その置き場所も一緒に確認します。

② 手動の吸引器・蘇生バッグの置き場所 必ず覚える

停電の時は、電動の吸引器が使えなくなります。 足踏み式や手動の吸引器、蘇生バッグがどこに置いてあるかを、訪問前に必ず見ておきます。 いざという時に「どこにあるか分からない」状態は避けたい所です。

③ 発電機は呼吸器に直結しない 必ず覚える

停電時に発電機を使う家もありますが、発電機は呼吸器に直結するのではなく、バッテリーの充電用として使います。 外出先での停電や災害時も同じ考え方です。 避難の計画(個別避難計画:災害の時に、誰がどう避難を手伝うかを一人ひとりに決めておく計画)を市町村と一緒に作っている家もあるので、ご家族に聞いておくとよいです。

停電・災害への備えは、バッテリーの時間・手動の道具の置き場所・発電機の使い方を訪問前に確かめておくこと。

卒業課題:訪問前チェック10項目

この講座の卒業課題は、初めての訪問の前に、ご家族・訪問看護と一緒に次の10項目を確かめて埋めることです。 この単元までに出てきた内容が、ちょうどこの表につながっています。

No. 確かめる項目
1 緊急時の連絡先と、連絡する順番
2 蘇生バッグの場所と、誰が使うか
3 外部バッテリーと手動の吸引器の場所
4 その方のYES・NOの合図(No.05)
5 自分が認定証を持っているか・事業所が登録しているか(No.03)
6 呼吸器の位置を動かしてよい場面(No.02・No.04)
7 介助の後に確かめる順番(No.04)
8 看護師が来る曜日と時間
9 ご本人が嫌がる事・好きな事
10 記録と報告の仕方

○ この表は、空欄のまま持ち歩いて、実際の訪問先でご家族・看護師に確かめながら埋めていくものです ○ 埋められない項目があれば、空欄のままにせず、誰に聞けば分かるかを管理者に確かめてください

確認問題

問1 訪問中に呼吸器のアラームが鳴った。最初にすることは?

問2 アラームが鳴り、本人の様子と数字を確かめた。その後、連絡や蘇生バッグをどうするか迷った。どうする?

問3 体位変換をした直後、呼吸器の数値がいつもと違う。最初に疑うべき原因の見方の順番は?

出典:PMDA「人工呼吸の安全セミナー」テキスト https://www.pmda.go.jp/files/000144877.pdf /大阪府「在宅人工呼吸器ハンドブック」https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/23150/h25-02-3jinkokokyuki.pdf /日本神経学会「筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023」Q&A10-11・10-12