ALSの方の訪問に入る前に読む講座

区分2 呼吸器と胃ろうのある暮らし★★★

No.02 人工呼吸器の基本とアラーム

ALSの方の訪問で、いちばん命に直結するのが人工呼吸器(以下、呼吸器)です。設定の数字や直し方は覚えなくて大丈夫ですが、「何をしている機械か」と「アラームが何を言っているか」は必ず分かるようにしておきます。この回はしっかりやります。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 回路・カニューレ・電源・バッテリーの見る所
  3. 第2章 アラームの種類と意味
  4. 確認問題

第0章 前提知識

① 呼吸器 :息をする仕事を助ける機械

ALSでは、No.01で見たとおり、だんだん息をする筋肉の力が弱くなっていきます。 呼吸器は、その弱った分を機械が引き継いで、空気を肺に送り込む装置です。

息を止めている時間が長くなるとつらくなりますが、呼吸器が代わりに空気を送ってくれるので、ご本人は体力を使わずに息ができます。

② マスクと気管切開の違い

呼吸器には大きく2つの付け方があります。

マスクの呼吸器(NPPV) 気管切開の呼吸器(TPPV)
空気の通り道 鼻や顔に当てたマスク のどに開けた穴(気管切開)から管で直接
外から見て マスクと管 のどの穴と、管をつなぐ「カニューレ」という小さな管
外れやすさ マスクのズレで漏れやすい カニューレが抜けると大事になる

どちらも、やっているのは「空気を送り込む」という同じ仕事です。 付け方が違うだけ、とまず覚えておくと整理しやすいです。

○ 気管切開(カニューレを通す、のどの穴)は医療の処置なので、ヘルパーが開けたり閉じたりすることはありません
○ マスクをいつ付けていつ外すかは、ご本人の希望と、主治医・看護師が決めた使い方に沿います。ヘルパーの判断で外したり、付ける時間を変えたりはしません
○ 「カニューレ」という言葉は、このあとの単元でも出てきます

第1章 回路・カニューレ・電源・バッテリーの見る所

呼吸器そのものの設定は、看護師・主治医の仕事です。 ヘルパーが見ておく所は、機械の中身ではなく「つながっているかどうか」です。

① 回路とカニューレ 必ず覚える

呼吸器から出ているじゃばらの管を「回路」と呼びます。 回路は、マスクか、気管切開のカニューレにつながっています。

見る所は3つだけです。

② 電源とバッテリー 必ず覚える

呼吸器は電気で動く機械なので、電源が切れると止まります。 確かめる所は次の3つです。

○ 実際にあった例:複数の人が介助に入っていて、「誰かが差し直しただろう」とお互いが思い込み、コンセントが外れたままだったことがあります。見たら分かることは、見た人がその場で確かめます
○ 実際にあった例:内部バッテリーの充電が足りず、呼吸器が止まってしまったことがあります。バッテリーは「ある」だけでなく「充電されている」かまで見ます

第2章 アラームの種類と意味

呼吸器にはアラーム(警告音)がついていて、何かおかしいとき音で知らせてくれます。 この回では「音が何を言っているか」までを理解します。鳴った時に実際どう動くかはNo.07(後で出ます)で練習します。

① 低い圧のアラーム=外れ・漏れ 必ず覚える

空気を送る力(圧)が下がりすぎたときに鳴ります。 原因は多くの場合、回路が外れていたり、どこかから空気が漏れていたりすることです。

② 高い圧のアラーム=つまり 必ず覚える

空気を送る力が上がりすぎたときに鳴ります。 原因は多くの場合、回路やカニューレが痰(たん)などでつまっていることです。

③ 電源のアラーム 必ず覚える

コンセントが外れた、電圧が足りない、停電になった、というときに鳴ります。

○ 覚え方:低い圧は「外れ・漏れ」、高い圧は「つまり」。電源は電源そのものと、ひとこと要約で覚えておくと整理しやすいです
○ 関係する単元:No.07 アラーム・急変・停電の時の動き

④ アラームが鳴らない外れもある さらっと

ここが一番のひっかけです。 回路が外れても、その先が布団やタオルでふさがれていると、圧が下がりきらず、アラームが鳴らなかった例があります。

つまり「アラームが鳴っていないから大丈夫」とは言えません。 音だけに頼らず、ご本人の顔色や胸の動きを見る習慣が大事になります。この見方の順番もNo.07で扱います。

呼吸器は、弱った息の力を機械が代わりに送り込む装置。マスクと気管切開は付け方の違いだけ。見る所は回路・カニューレ・電源・バッテリーがつながっているか。アラームは低い圧=外れ・漏れ、高い圧=つまり、電源=電源。鳴らない外れもあるので、音だけに頼らない。

確認問題

問1 マスクの呼吸器(NPPV)と気管切開の呼吸器(TPPV)の違いとして正しいものは?

問2 呼吸器の「低い圧のアラーム」が鳴っている。意味として近いのは?

問3 訪問中、呼吸器のアラームは鳴っていないが、何となくご本人の様子が気になった。このとき正しい考え方は?

出典:PMDA「人工呼吸の安全セミナーテキスト」(https://www.pmda.go.jp/files/000144877.pdf)/大阪府「在宅人工呼吸器ハンドブック」(https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/23150/h25-02-3jinkokokyuki.pdf)(2026年10月時点)