ALSの方の訪問が決まった時、多くの人がまず感じる不安は3つです。
この3つは、介護の経験があるヘルパーでも感じます。 機械につながれた方の介助をしたことがない人がほとんどだからです。
この不安は、やる気や優しさが足りないから起きるのではありません。 何を知らないかが分からないことから起きています。
機械が怖いのは、アラームが鳴った時に何を見ればいいか知らないからです。 見る順番を知っていれば、怖さはかなり減ります。
話せない方への声かけに迷うのは、意思の伝え方に文字盤や口文字といった方法があることを知らないからです。 方法を知っていれば、「待てばいい」と分かります。
違法かどうかが分からないのは、吸引や胃ろうへの注入に、研修と認定証と医師の指示書が必要だという線引きを知らないからです。 線を知っていれば、自分がどこまでやってよいかがその場で分かります。
この講座は、この「知らない事」を1つずつ知っている状態にすることを目指します。
人工呼吸器・胃ろうのあるALSの方の訪問で、やること・やってはいけないこと・もしもの時の動きが分かり、本人の意思を確かめながら介助できること。
医療の勉強をするわけではありません。 ヘルパーとして訪問に入る時に、自分の役割と、やってよい事の範囲が分かっていることがゴールです。
初回の訪問の前に、「訪問前チェック10項目」を、ご家族・訪問看護と一緒に確かめて埋められることです。
チェックの中身は、緊急時の連絡先・蘇生バッグ(アンビューバッグ)の場所・ご本人の意思の伝え方・自分ができる行為の範囲などです。 最後の単元(No.08)で、実際に埋めます。 読むだけで終わらせず、1つでもご家族や看護師に確かめてみてください。
外して大丈夫かなと思うかもしれませんが、これらはヘルパーが知らなくても訪問はできます。 困った時は、管理者や看護師に聞けば足ります。
講座は、訪問で出会う順・不安が出やすい順に5つの区分で並べています。
○ 区分1 病気を知る(No.01)
ALSがどんな病気で、何が残るかを知る区分です。覚えるのは「何が残るか」だけで十分です
○ 区分2 呼吸器と胃ろうのある暮らし(No.02〜03)
機械の仕組みと、ヘルパーができる範囲を知る区分です。機械は「何をしているか」だけ分かればよく、できる・できないは表で覚えます(表は No.03 で出ます)
○ 区分3 毎日の介助(No.04〜06)
体位変換・着替え・声かけを、本人の意思を確かめながら行う区分です。介助の後の確かめを、毎回同じ順でやれるようにします
○ 区分4 もしもの時(No.07)
アラームが鳴った時・急な変化・停電の時に、最初の1分で何をするかを決めておく区分です
○ 区分5 支える仕組み(No.08)
ご家族・訪問看護・相談員がそれぞれ何を担っているかを、ざっくり知る区分です。細かい制度の計算は覚えなくてよく、誰につなぐかだけ分かれば十分です
区分1は、他の区分の土台になります。 「何が残るか」を知っているかどうかで、区分3の接し方が変わります。
区分2は言葉が多い区分です。 一度で全部覚えなくてよく、No.03の表を何度も見返すつもりで読んでください。
区分3と区分4は、実際の訪問でそのまま使う内容です。 手が止まった時に戻ってこられるよう、見る順番を体で覚えるつもりで読んでください。
区分5はさらっとで十分です。 名前と役割だけ知っておけば、困った時に誰につなぐかが分かります。
最後に呼び名の約束です。 この講座では、利用される方を「ご本人」、ご本人の家族を「ご家族」、訪問看護の看護師を「看護師」と呼びます。 呼吸器・蘇生バッグなどの呼び名も、各単元の初出で一言添えた後は、講座全体で揃えます。
ゴールは、ALSの方の訪問でやること・やってはいけないこと・もしもの時の動きが分かり、本人の意思を確かめながら介助できること。卒業課題は、「訪問前チェック10項目」をご家族・訪問看護と確かめて埋めること。